コラム

獣医療広告 獣医療法

獣医療広告について④~広告には当たらないとされる例(1)~

弁護士 小島梓

「広告」の定義、通常広告とみなされる例については、「獣医療広告について③~広告の定義~」にてご説明した通りで、
(1)    随時に又は継続してある事項を広く知らしめるものであり、
(2)    次のアからウまでの全ての要件に該当するとペットオーナー等が認識できるもの
ア 誘引性:飼育者等を誘引する意図があること
イ 特定性:獣医師の氏名又は診療施設の名称が特定可能であること
ウ 認知性:一般人が認知できる状態にあること
の要件を満たす場合には、広告とみなされます。

 今回は逆に、通常は広告とはみなされないのもについて見ていきます。
 重要な点は広告に当たるか否かは、あくまで実質的に判断されるということです。これからご説明する原則として広告とはみなされない具体例についても上記要件に鑑みて、実質的に見て「広告」に該当するとされる可能性は十分にありますのでご注意ください。

①学術論文、学術発表等
 学会・専門誌等で発表される学術論文、ポスター、講演等は、「誘引性」を通常は有さないため、原則として、広告とはみなされないと考えられています。

②新聞、雑誌等の記事
 新聞、雑誌等の記事も、通常は「誘引性」を有さないため、ガイドラインでも広告とみなさないものとされています。
 しかし、いわゆる「記事風広告」は誘因性を有するものとして、広告に該当すると考えられています。
 人医療の広告に関するQ&Aを参考にしますと、この記事風広告とは、新聞や雑誌等に掲載された記事であっても、医療機関が広告料等の費用を負担する等の便宜を図って記事の掲載を依頼し、患者等を誘引するような記事を指しており、この場合は実質的に誘引性が認められるので、広告に該当すると判断される可能性が出てきます。

③体験談、手記等
 昨今、非常に増えている、いわゆる「口コミ」「お客様の声」などがこれに該当することになります。口コミなどには、事実上良い評判を広げてくれる効果がありますが、実際の体験に基づいて、個人が特定の診療施設を推薦したにすぎず、「誘引性」を有さないため広告とはみなされないと考えられています。
 ただし、当該診療施設がペットオーナーなど個人の「お客様の声」等を利用し、パンフレット等に掲載した場合は、「誘引性」を有するものとして扱われる可能性も指摘されているため、注意が必要です。

④診療施設内掲示、診療施設内で配布するパンフレット等
 診療施設内掲示、診療施設内で配布するパンフレット等はその情報の受け手が、当該診療施設を受診するペットオナー等に限定されるため、一般人が認知できる状態にあるとは言えず、「認知性」の要件を満たさないため広告とはみなされないと考えられています。
 ただし、診療施設の道路に面した窓に、外側に向けてパンフレットなどを貼付している場合、道路を歩いている一般人も、外から容易に内容を把握することができます。そのため、情報の受け手が限定されておらず、「認知性」を有すると判断される可能性はあります。

 次回も引き続き、広告には該当しないとされる具体例を見ていきたいと思います。