コラム

労務問題

雇用時の身元保証

弁護士 長島功

 身元保証というのは、スタッフが会社に損害を与えてしまい、スタッフ自身がその損害を賠償できないような場合に備えて、賠償能力のある人に身元保証をさせるもので、動物病院でもこの制度を使っているところはあります。
 ただ、令和2年4月1日(以下、単に「施行日」といいます)施行の改正民法により、この身元保証の契約が無効になってしまう場合がありますので、以下解説いたします。

1 極度額の定め
 民法の改正により、保証契約を締結するにあたっては、確定的な金額により保証人が責任を負う上限額(極度額)を契約書の中で定めなければ、その効力は生じないとされました。
 そのため、これまでは単に生じた損害を賠償しますという内容の書面を差し入れてもらっていたと思いますが、施行日以降の身元保証書契約では、極度額を定めなければ無効になってしまいます。

2 極度額をいくらにするか
 金額を具体的にどうするかについては、明確なルールはありません。
 とはいえ、実際上仮に保証人に請求するような場合でも、損害額全額を請求できないことが多いこと、あまりに高額のものを定めれば、そもそも差し入れを拒否される可能性もあることから、ある程度合理的な金額によるべきと思われます。
 その方の職種などに照らし、想定される賠償額を踏まえて設定すべきで、不必要に高額にせず合理的な範囲に止めることをお勧めします。  

3 具体的な定め方
 極度額の具体的な記載の仕方ですが、明確に金額を入れることをお勧めします。
 月収の○ヶ月分という書き方は、いつの月収なのか、月収とはどこまでの金額をいうのかなどが曖昧になりますし、保証人からすると結局いくらなのかがはっきりしません。これでは、極度額の記載を求めている法の趣旨にも反しますので、紛らわしい記載の仕方は避け、端的に金額を明記することをお勧めします。