コラム

獣医師法 獣医師に対する行政処分

獣医師に対する行政処分②~獣医師法8条2項の要件(1)~

弁護士 小島梓

 獣医師法8条2項に行政処分の対象となる要件が規定されています。今回は、当該条項に定められている要件のうち、診療拒否と届け出義務違反について、ご説明します。
 なお、当該要件に該当した場合に即行政処分がなされるというわけではありません。この行政処分の仕組みは後に別のコラムで改めてご説明いたします。

(1)診療拒否(獣医師法19条1項)
 先生方もご存じの通り、獣医師には、「診療を業務とする獣医師は、診療を求められたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。」として、いわゆる応召義務が課されています。
 当該規定に反して、正当な理由なく診療を拒否した場合、悪質とみなされると、業務停止等の行政処分がなされることになります。
 なお、応召義務に対する違反は、本来、診療業務に関する道徳的違反であるため、罰則は規定されていません。

(2)届出義務違反(獣医師法22条)
 定期的に行っていただいていると思いますが、獣医師には「農林水産省令で定める2年ごとの年の12月31日現在における氏名、住所などを、当該年の翌年1月31日までに、その住所地を管轄する都道府県知事を経由して、農林水産大臣に届け出なければならない。」という届出義務が課されています。期限までになされなかった届出は、当該条項に定められている「届け出」とはならず、義務違反となりますので、注意が必要です。
 当該義務違反についても罰則は定められておりませんが、当該規定に反して届出を怠った場合には、行政処分の対象となります。

 次回も引き続き、行政処分の対象となる残りの要件についてご説明します。