コラム

裁判例

競走馬の育成馬への付保義務が問題となった裁判例

弁護士 幡野真弥

 東京地裁令和 4年 4月12日判決をご紹介します。

 原告は、軽種馬の生産・育成、競走馬の保有・出走等の事業を目的とする株式会社です。
 被告は、競走馬の売買の仲介、生産における情報提供業務等の事業を目的とする合資会社です。

 原告と被告は、平成24年9月頃、原告が所有する競走馬の管理等を、被告に委託するという内容の業務委託契約を締結しました。

 原告は、平成24年、ある競走馬を1億5750万円で購入し、引退させて繁殖牝馬とし、イギリスに送って非常に優良な種牡馬に種付けさせることにしました。
 牝馬は、渡英後、平成27年2月17日の種付けで受胎し、平成28年1月19日に仔馬を出産しましたが、その仔馬は、7月28日に死亡してしまいました。仔馬には保険が掛けられてませんでした。

 原告は、被告が、育成馬の付保義務(保険を掛ける義務)を負っていたと主張し、被告に対し2000万円を請求し、裁判となりました。

 業務委託契約書上、保険について明示的に言及する記載は見られず、原告は、裁判では、原告側が主張した付保義務について認定されず、原告の請求は棄却されることとなりました。付保義務や競走馬に関連する裁判例は珍しかったため、今回ご紹介しました。