コラム

裁判例 動物愛護法

動物虐待の刑事事件

弁護士 幡野真弥

 犬や猫などの愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金が科せられます。また、愛護動物を虐待又は遺棄した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。今回は、動物虐待に関する刑事事件の裁判例をご紹介します。

 1つ目は、さいたま地裁令和 3年 8月27日判決です。 
 河川敷で、犬を足で蹴り,その身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、愛護動物をみだりに虐待したということ起訴され、刑事裁判になりました。

 裁判所は、「被告人は,無防備な小型犬に対して,足で蹴る暴行を加えており,無慈悲ともいえる犯行は,強い非難に値する。本件犬の持ち主であったBについては,人が行き交う河川敷でリードを付けることなく歩かせていた点でやや問題があったとはいえ,当然のことながら,愛犬を蹴られるべき筋合いのものではない。そして,被告人は,不合理な説明を続けて犯行を否認し,Bに対しても具体的な慰謝の措置は講じていないのであって,本件を真に反省しているとはいえないことも踏まえると,被告人の刑事責任を軽くみることはできない。」としつつ「他方で,本件は犬に対する傷害の故意に基づく起訴ではなく,あくまで動物愛護法44条2項の事案であること,Bも公判時点では厳しい処罰感情までは示していないことなどの事情があるほか,被告人は,本件により勾留された後,保釈されるまでの3か月を超える身柄拘束の間に自分の行いを振り返る機会を与えられ,相応に懲りたものと考えられる。そして,本件暴行は否認しているものの,犬が結果として亡くなっていることについては,「かわいそうなことをしたと思っている。」とは発言していて,そこには一片の人間性が垣間見られなくもない。」といい、罰金20万円の判決を言い渡しました。

 次に、千葉地裁令和 3年11月 8日判決をご紹介します。
 空気銃を猫に向けて発射し、猫2匹を殺し、4匹を傷つけた動物愛護法違反及び銃刀法違反の事案です。
 裁判所は「被告人は,弱いものいじめをして,高揚感を得るために,もともと適法な狩猟のために所持していた本件空気銃を使って猫を撃つことにし,あらかじめ猫がいる公園を調べるなどした上で,本件空気銃を持って本件各犯行場所に赴き,猫を虐げる行為を繰り返していたものである。愛護動物である猫の生命や苦痛を慮る姿勢は皆無で,強固な犯意に基づく計画的犯行であり,その動機・経緯に酌量の余地はない。
 本件各犯行は,約1年10か月の間に,複数の公園や住宅街の駐車場において,猫に向けて本件空気銃を発射して殺傷する行為を6回繰り返したものであるが,被告人の供述によれば,本件空気銃を売却した令和3年1月までの間,約2年半にわたり,弾丸が猫に当たらなかったときも含めると80回から100回程度は本件空気銃で猫を撃ったというのであって,極めて常習的な犯行の一環といえる。
 本件空気銃は,人に対しても殺傷能力を有する強力なものであった。そのような銃を銃器の使用が禁止された区域の公園や住宅街において繰り返し発射したことは,人の生命・身体・財産にも危険を与えかねず,銃刀法違反として重大である。動物愛護法違反の観点からも,愛護動物の生命に対する危険性が大きく,実際に,本件各犯行の対象とされた猫6匹のうち2匹が死亡したほか,判示のとおりの傷害を負った。」と判断しつつ、被告人が反省していることや家族の監督のもとでの更生の意思を表明していることなども考慮し、懲役1年6ヶ月、執行猶予3年を言い渡しました。