コラム

裁判例

馬が受傷・死亡してしまった場合の賠償額③直近の取引価格

弁護士 幡野真弥

 札幌地裁平成元年9月28日判決をご紹介します。

 栗拾いに来ていた幼稚園児20~30名が騒いだため、牧場に放牧されていた馬が驚いて、柵を飛び越そうとして転倒、骨折し、立つことができなくなったため殺処分になったという事案です。
 
 判決文では、
「本件馬匹の昭和60 年10 月11 日当時の時価評価額は、軽種馬として少なく見積もっても1200 万円を下ることはないものと認められる」
 とだけ記載されていますが、判例解説(判時1379 号175 頁)によりますと、死亡した馬に800 万円で買手がついていたこと、800万円という価格は、馬を競走馬として使用した後に、繁殖用に無償で返してもらう約束で400 万円の値引きをした価格であったこと(1200万円-400万円=800万円)に基づいているとのことであるとされています。 
 なお、馬の父親は、有馬記念で優勝したトウショウボーイだったようです。