コラム

獣医師の守秘義務

弁護士 長島功

 獣医師が職務上知り得た情報について,獣医師には守秘義務があるのでしょうか。

 弁護士や医師,歯科医師,薬剤師等には,刑法134条で正当な理由がない限り業務上知り得た情報について漏らしてはならないという定めがあり,違反すれば秘密漏示罪という犯罪が成立します。
 また,保健師や看護師,臨床検査技師,救命救急士,歯科衛生士等は,個別の法律で守秘義務が定められています。
 ただ,獣医師の場合,獣医師法にも獣医療法にも,現在そのような定めはありません。

 しかしながら,例えば,ペットの病名や予後などは他人に知られたくはないと考えるオーナー様も当然おられます。そのため,守秘義務が法律上明確に定められていないからといって,安易にそれらを口外することは,オーナー様とのトラブルの原因になります。
 また,どこまでが個人情報に該当するかという問題はありますが,個人情報保護法による規制(原則として,飼い主の個人情報を飼い主の同意無くして第三者に提供できない)は受けます。日本獣医師会の定めた小動物医療指針でも,「16」において,飼育動物に関する情報も含めて,個人情報保護が要請されています。
 さらに,オーナー様との診療契約により,獣医師には善管注意義務が課せられますが,その内容に守秘義務も含まれていると考えることも可能で,違反すれば,場合によっては民事上の責任を負わなければならない可能性もあります。

 ですので,獣医師もペットの情報含めて,職務上知り得た情報を正当な理由なく第三者に漏洩してはならないと考えるべきです。
 また,スタッフの方も同様に情報に接するわけですから,獣医師のみならず,動物看護師などのスタッフへの周知徹底も行うべきといえるでしょう。