コラム

獣医師のカルテについて⑦~オーナーとのトラブル予防~

弁護士 小島梓

前回までに,ご説明してきた通り,獣医師にとってカルテは,紛争になってしまったときの証拠としても大変重要なものです。
 さらに,カルテを適切に作成しておくことは,オーナーとのトラブル予防にもつながります。
 今回は,このトラブル予防の観点から,カルテの重要性についてお伝えしていきたいと思います。

 残念ながら,オーナーとの紛争になってしまいますと,多くの場合,オーナー側からカルテ開示の請求が参ります。オーナーとしては何が行われたかをまず知りたいということになりますので,当然の結果でもあります。

 また,特に紛争になっているわけではなかったとしても,事情があってオーナーよりカルテ開示の請求がなされることはあります。

 そして,お伝えしたように獣医師には,カルテについて開示義務がありますので,カルテ開示を行うことになりますが,そのカルテに処置内容がほとんど書いてない,説明の記載もない,もしくは不適切な記載があるとなった場合,オーナーはどう思うでしょうか。

 獣医師側は実際には,ペットのことを考えて,適切な処置をしっかりと行っていたにもかかわらず,記録を見ても分からないことから不信感が増大してしまうことになりかねません。
 逆に,開示されたカルテにしっかりと必要な記載があり,ご説明してきた有益的な記載もなされている状態であれば,オーナーにおいて一定の納得が得られ,紛争が次のステージに進むことを防げるケースもございます。

 このように,カルテは,ペットにとって重要な医療記録であるばかりでなく,獣医師にとって様々な意味で重要なものであり,また,オーナーにとっても大切な記録といえます。

 日常の獣医療業務に追われる毎日の中で,カルテに詳細な記録付けることが容易なことではないことは十分に承知しておりますが,改めてカルテの重要性について見直していただき,可能な範囲で記載を工夫するきっかけとしていただけますと幸甚です。