コラム

獣医師のカルテについて③~証拠としての重要性~

弁護士 小島梓

 「獣医師のカルテについて②カルテの開示」のコラムの中でご紹介しました通り,獣医師には実質的にカルテの開示義務があると考えられております。そのため,常にオーナーに開示しても問題ない適切な内容でカルテを作成しておくことが重要となることは,当該コラムの中でご説明した通りです。

 さらに,カルテはオーナーと紛争になってしまった際の証拠としても重要なものです。

 そこで,今回以降,このカルテの証拠としての重要性に焦点を当てて,ご説明をしていきたいと思います。まず,今回は,カルテがなぜ,獣医師にとって証拠として重要と言えるのか,裁判例をご紹介しつつご説明します。

 人間の医療に関わる裁判例ですが,カルテについては,後日改変されたと認められる特段の事情のない限り,その真実性は担保されている,すなわちカルテに記載されていることは事実と認めうるという趣旨の判断がなされています。(東京高判昭和56年9月24日)

 すなわち,カルテに記載しておきさえすれば,獣医師の主張することが事実として存在したことをカルテのみで立証しうることになります。

 訴訟になり,裁判所に事実を認定してもらおうとすると,どうしても主張に関する裏付けを求められることになります。
 逆に申し上げれば如何に事実であったとしても,裏付ける証拠がない場合には,事実として認定してもらえないことがあり得るということです。

 さらに,カルテ以外の証拠を集めて立証しうるとしても大変手間がかかることが多いです。

 しかし,適正なカルテを作成しておけば,紛争になった際に,比較的容易に獣医師の主張を立証しうることになります。このように,カルテが獣医師の強い味方になりえるため,この側面からも大変重要なものです。

 そこで次回以降,より具体的に証拠としての役立つカルテという観点から有益な記載というのがどのようなものかをご紹介していきたいと思います。