コラム

未収金回収

未収金回収の交渉

弁護士 長島功

 債権回収時の督促状の送付についてお話してきましたが、督促状を送付することで、入金があれば何も問題はありません。ただ、実際には督促状を送付した後に、こちらの主張に対して反論がなされたり、診療費の支払義務自体は認めつつも、様々な事情から、減額や期限の猶予を求められたりするケースも多いです。
 そのため、督促状の送付に加えて、その後のオーナー様との交渉も、実際の債権回収のためには重要となってくるため、いくつかポイントを挙げてみます。

1 減額や分割も検討する
 診療費は「直ちに」「一括」にて、「全額」が支払われて当然と考えるのが獣医師の心情かと思います。
 そのため、オーナー様から減額や分割での返済、期限の猶予の申し出があっても、一切取り合わずに、ただ支払を催促し続け、一円も回収できていないというケースもたまに見受けられます。
 しかし、現実には未収金を一括で全額回収するというのは非常に難しく、任意に支払ってもらえなければ、費用と時間をかけて、法的手続を執ることになってしまいます。しかも法的手続をとったからといって、回収できる保証はどこにもありません。そのため、少しでも現実に回収をするという意味では、分割なども検討をするべきです。もちろん、応じるべきではない場面もありますが。少なくとも最初から一切受け付けないというのは、あまり合理的ではないかと思います。

2 オーナー様の言い分を聞く
 なぜ支払えないのか、なぜ期限を延ばさなければならないのかなど、その理由を交渉時に確認することをお勧めします。
 獣医師からすると、そんな理由はどうでも良いから、早く支払って欲しいと思われるかもしれませんが、この債務者の言い分に,今後のどのような手続を取っていくべきかや,将来の回収につながる情報がたくさん含まれています。
 本当にお金がなく、今後も得られる見込みが少ないようであれば、全額一括弁済にこだわっても、ただ時間が経過するだけです。そこで、分割でも良いので、できるだけ多くの金額をできるだけ短い期間で支払ってもらえるように話し合いを継続した方が良いです。
 一方、言い分が疑わしいときや、ミスがあるから支払わないなど、そもそも診療費の支払債務自体を争うようなことを言ってくるようであれば、あまり交渉を継続しても意味がありませんので、法的手段を取ることも検討すべきかと思います。