コラム

労務問題

自宅待機命令について

弁護士 長島功

 スタッフの問題行為が疑われ、懲戒処分を検討しなければならない場合、まずは事実確認のために調査をし、それを踏まえて処分内容を検討することになります。
 ただ、事案が複雑な場合、処分までにある程度時間を要することが多く、その間、当該スタッフを通常どおり出勤させておくべきではない場合があります。
 ハラスメントが動物病院内で起きた可能性があるような場合、さらなる被害拡大を防ぐ必要がありますし、横領などが疑われるケースでは、疑いが出ているにもかかわらず、動物病院の経理等にそのまま当該スタッフを関与させておくべきではありません。場合によっては証拠隠滅に及ぶ可能性もあります。

 そこで、こういったケースでは、処分が決まるまでの間、当該スタッフを自宅待機として良いか、その間給与はどうすべきかということが問題になります。

 まず、自宅待機ですが、業務命令として行うことは可能です。
 労働者には原則として就労請求の権利はないと考えられていますので、特に就業規則の根拠がなくても自宅待機を命じることは可能です(もちろん、合理的な理由もなく、不当な目的をもって自宅待機を命じるなど濫用的な自宅待機命令は許されません)。
 そのうえで、賃金をどうするかですが、あくまで疑いの段階ですし、法的には、自宅待機命令は、動物病院側の事情で行っていると基本的には考えられます。そのため、自宅待機中の賃金は原則として支払わなければなりません。
 問題行為の性質や、再発、証拠医滅の恐れなどから、緊急かつ合理的な理由があるような場合には、無給とすることも許される場合もありますが、限られた場合ですので、その場合は事前に専門家にご相談されることをお勧めします。