コラム

労務問題

懲戒処分の種類②

弁護士 長島功

 今回は、重い解雇に関する処分についてみていこうと思います。

1 懲戒解雇
 これは懲戒処分の中でもっとも重い処分です。動物病院側から、一方的に労働契約を解約する処分ですので、スタッフは一方的に辞めさせられることになりますし、制裁としての解雇をされますので、再就職にも影響が出かねません。
 また、スタッフを解雇する場合は、労働基準法20条1項により、解雇予告・解雇予告手当の支給が必要となり、即時解雇はできないのですが、懲戒解雇の場合は同条項ただし書の「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合」として、解雇予告、解雇予告手当の支払いをせず即時解雇されるのが通常です。加えて、退職金規程の定めに基づいて退職金の全部または一部が支給されないことが多いです。

 なお、懲戒解雇の場合、常に退職金の全部または一部の不支給が許される訳ではないです。労働者のそれまでの勤続の功を抹消(全額不支給)ないし減殺(一部不支給)してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合に限られると考えられています。実際の判例でも、繰り返し痴漢行為を行った社員の事案で、懲戒解雇の有効性は認めつつも、それまでの勤務態度などを考慮して、全額不支給まではできないとし、3割の支払を命じたものがあります。

 いずれにしても、懲戒解雇はこのようにかなり重大な不利益を与える処分になりますので、相当慎重に行う必要があります。

2 諭旨解雇
 上記懲戒解雇を若干軽くしたものとして、諭旨解雇というものを定める場合もあります。
 また、退職願や辞表の提出を促した上で、それに応じない場合には懲戒解雇するという形式をとる場合もあります。動物病院を辞めてもらうことになる点で重大な不利益をスタッフに及ぼすものではありますが、通常の自己都合退職の場合と同様、退職金が満額支給される場合もあります。