コラム

労務問題

懲戒処分③~処分の相当性~

弁護士 長島功

 今回からは、懲戒権の濫用についてです。
 スタッフの問題行為が、就業規則の懲戒事由に該当する場合であっても、それが懲戒権の濫用だとされてしまうと、その懲戒処分は無効となってしまいます。
 そこで、どういった場合に懲戒権の濫用となってしまうのかについて、何回かに分けて、解説していきます。

 今回はまず、処分の相当性についてです。

 懲戒処分には、いくつかの種類がありますが、その処分がスタッフの問題行為の性質・態様、その他の事情などに照らして、相当なものでなければなりません。具体的には、それまでの勤務状況や注意・指導歴、懲戒歴、本人の反省の程度、被害の程度などを考慮して判断します。
 どういった処分をするかについては、動物病院側にある程度の裁量が認められますが、その裁量判断を誤り、不当に重い処分を選択してしまうと、無効とされてしまうことがあります。もっとも重い懲戒解雇をする場合には、この相当性の観点から、特に慎重に判断をする必要があります。
 また、この相当性の判断にあたっては、同じ規定に同程度違反した場合には、処分の内容は同じ程度であるべきという公平性も考える必要があり、先例も踏まえて判断されます。

 院長先生から、スタッフを解雇できないかというご相談を受けることがあるのですが、過去、何度も似たような問題行動があったものの、それまで一度も注意や指導を行ったことがなく、当然処分も行ったことが一度もないというケースが意外とあります。こういった場合、余程の問題行動であればまた別ですが、いきなり懲戒解雇の処分をすることは、処分の相当性の点から、一般的に相当難しいです。

 スタッフに問題行動を改善させるきっかけになるものですし、懲戒処分はしないで済むのであれば、それが一番ですから、日ごろから、問題が見受けられる場合には、時間をとってスタッフの話を聞きつつ、注意・指導を丁寧に行っていくことが大切といえます。