コラム

獣医療訴訟

裁判所の医療集中部について

弁護士 長島功

 最近は、獣医療過誤等が起きた場合、残念ながら裁判になってしまうケースも多くなっています。そこで、今回は、裁判所にある医療集中部についてお話ししてみたいと思います。

 裁判所には、その規模にもよりますが、内部に複数の部があり、訴えが起こされると、裁判所内部で、どこの部がその事件を扱うかが決まります。
 この部には、東京のような大きな裁判所の場合、あらゆる事件を取り扱う通常部に加えて、特定の分野の事件を専門的に扱う専門部が存在します。例えば、行政部や商亊部、労働部、知的財産部などです。
 これは専門知識を要するような事件について、特定の部が集中的に取り扱うことにより、審理の効率化をはかって、審理期間を短縮することを目的にしています。
 そして、この専門部の1つに、医療事件を扱う部として、医療集中部というものがあります。医療集中部は、どこの裁判所にも存在している訳ではありませんが、東京だけではなく、大阪、横浜、さいたま、名古屋、仙台、札幌などにも存在します。
 人の医療過誤の場合はもちろんですが、獣医療過誤が起きた場合も、近時はこの医療集中部で審理をされることが多くなってきました。
 獣医療と人医療では異なる部分も多いのですが、医療特有の注意義務違反や因果関係、損害の判断や説明義務違反の問題など共通する部分も多く、その専門性ゆえに、専門部で集中的に取り扱った方が、訴えられる獣医師の側からしても望ましいです。
 実際、弊所弁護士がこれまで扱った事件では、仮に通常部に配転がなされたとしても、地方裁判所の医療集中部での審理が望ましいと積極的に主張し、医療集中部で審理してもらうケースが多いです。
 通常、裁判は単独の裁判官によって審理されますが、この医療集中部では、合議体つまり3名の裁判官によって審理がなされます。
 また、できるだけ効率的に審理が進められるように、証拠を医療事件特有の視点から分類したり(A:カルテなど診療経過に関するもの、B:文献などの医学的知見に関するもの、C:損害などそれ以外のもの)、争いのある事実とそうでない事実を明確にし、効率的に争点を整理するために、診療経過一覧表というものを作成するといった特徴があります。