コラム

手術承諾書 クレーム対応 オーナーとのトラブル

手術承諾書について②~ペットのオーナー様とのトラブル防止~

弁護士 小島梓

 昨今,残念ながら,ペットオーナー様とのトラブルが増えてきていることは周知のとおりです。オーナー様とのトラブルになるきっかけで非常に多いのが,ペットが亡くなってしまったときなどに出てくる「麻酔や手術が危険だとは思わなかった」「危険性は理解できなかった」というクレームです。

 当事務所では,経験上,このペットオーナー様からのクレームを防ぐために,手術承諾書が役立つと考えております。
 今回はこの点に焦点を当てて,手術承諾書の必要性・重要性についてご説明していきます。

 オーナー様は,獣医師や動物看護師と異なり,基本的に獣医療に関して多くの知識を有しているわけではありません。
 そのため,獣医師や動物看護師より受けた説明がよく理解できなくても,プロの言うことだから正しいのだろうと思い,聞き返したり,繰り返しの説明を求めたりすることなく,麻酔を使用する処置を受け入れることは少なくありません。

 しかし,そのような状態で処置を行うことに同意した後,残念ながら麻酔や手術の結果ペットが亡くなってしまったりすると,ペットオーナー様の多くは,ペットが亡くなったことに対する悲しみから,なぜ自分は処置を受けさせたのだろうと自分の判断を責めるという流れになりがちです。

 最後には,処置の危険性が分からなかったせいだ,理解していれば処置はしなかったのに,そして,そうなってしまったのは,獣医師の説明が不足していたせいだという流れで,クレームになってしまうケースがあります。

 当事務所では,このようなクレームを防ぐ一つの方法が,オーナー様より承諾書を頂くことと考えております。

 人間,口頭での説明はどうしても流れてしまいがちですが,書面に記載されたものを読み,かつ署名押印をするとなると,慎重になります。その結果,まずリスクを理解できないまま,手術を受け入れるということが少なくなります。

 お客様の中には,オーナー様を悲しませたくないという思いから,処置前に敢えて,厳しいリスク等を伝えない,伝えるとしてもオブラートに包んで明確には伝えないという方針で行われている方もいらっしゃると思います。
 確かに,厳しい見通しやリスクを伝えられた時にペットオーナー様は悲しまれると思います。ただ,経験上多くのペットオーナー様は,事実を知りたい,知ったうえで,判断してあげたいと思っておられます。

 加えて,リスクや悲しい事実は,いつかはオーナー様が向き合わなくてはいけないことになるものです。

 以上のように,ペットオーナー様が後悔しない判断を行い,後にクレームが出にくいシステムを作っていくために,手術承諾書は重要と考えております。
 ただ,当事務所でも,獣医師の先生方が考えうるすべてのリスクを事前に伝えるべきと考えているわけではございません。どこまで,何を伝えるべきかについては,一度ご相談いただければと思います。

 次回は,獣医療訴訟における,手術承諾書の重要性,訴訟において果たす役割をご紹介したいと思います。